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クトゥルフ神話TRPG第7版レビュー(仮)

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クトゥルフ神話TRPG第7版レビュー(仮)

クトゥルフ神話TRPG第7版はどう変わったのか、結論から述べると、
・初心者により理解しやすい構成へ、実際の運用を視野に入れながら
・旧版の複雑な部分・曖昧だった部分に手を入れ、実例を交えて判断
・物語性の強化、プレイヤー及びキーパーがより主体的に物語に関わって行けるように
・デザイン性の強化、読むべきルールブックから読みたいルールブックへ
 以上の点から、旧版の内容をブラッシュアップしながら、よりゲーム性・物語性を高め、初心者から馴染みまで読みやすいルールブックになったというのが自分の見解である。

 まず、初心者に分かりやすい構成とは、例えば能力値のパーセンテージ制への移行によるや、戦闘ラウンドの進行を説明する表の付記などが代表的な例で、より直感的にわかりやすく、理解に時間がかかる部分は理解を助ける工夫が凝らされている。
 呪文の章の各呪文の説明の最初に、その呪文のコストや対象が提示されるようになったり、神話生物の攻撃回数が明示されたり、データと説明文の分離がちゃんと行われたのも、地味ながら読みやすさの向上に役立っている。
(逆に言うと、今までこの部分はかなり読みづらいルールブックだったということだが)
 また、実際のセッションで様々な状況があることを想定し、それに対応するためのオプションルールの提案も多く行われている。
 例えば、探索者の作り方を取り上げると、通常のダイスロールで決定していく形式の他にも、ポイント購入式やダイス割り振り式などの方法が提案されており、セッションの状況に応じてフレキシブルに選択していくことができる。
 時間に余裕が無ければポイント割り振り式などのある程度時間のかからない方法を選べばいいし、コンベンションなど初対面の人が相手なら、ダイス割り振り式など出目の幸不幸をある程度カバーできる方法を採用することができる。
 他にも、探索者ハンドブックの方は第7章で探索者としての行動指針が示され、キーパールールブックでは第10章で実際のプレイの組み立て方をしっかり解説してあり、同時にハーベイ先生が過労死する勢いでプレイ例が付記され、読者の理解を大きく助けている。

2番目の部分だが、
 上記でも触れたが、個々の項目にその具体的な運用例を示すことで、説明文だけではわかりにくい部分も理解しやすくなっている。
 各技能の解説を見ても、技能の説明だけではなく、プッシュロールを行った時にどのようにロールプレイすればいいのか、ロールプレイに失敗した時どう演出するべきかが記され、読者の戸惑う部分をよく理解し対策を施そうとする意欲が見受けられた。
 また、今までハウスルールとしてなんとなく運用されてきた部分が明確化されたり、オプションルールとして取り入れられて、再構成されている。
 例えば、特に難しい行為判定については、これまでは技能判定値にマイナスを加えたり、判定値を半分にしたり、運用にばらつきがあったが、7版では行為判定に難易度レベルが設定されて明確化した。
 あとは、先述の通りにデータと説明文の分離が意識されたのも良い変化だと思う。
 細部の改変・追加は多いものの、ルールが根本的に変化したものは少なく、今までの版をプレイしてきたプレイヤーなら、慣れるのにはそう時間はかからない。
 また、実例の提示が多いので、全訳しようとすると骨だが、ルールの大意を掴むだけなら、旧版よりもグッと楽になっているよう感じられた。
 いまいち理解しにくい部分があれば、その部分は翻訳するのを保留し、ハーベイ先生の活躍を参考に運用方法を理解し、改めて検討しなおすと良い。
 もちろん、メスを入れるべき部分にはしっかり踏み込まれている。
 戦闘ルールは大きな変化のあった例の一つで、攻撃の回避・反撃が対抗ロールに収められた。
 旧版では、攻撃側が命中のための判定ロールを行いその成否を見て、しかる後に防御側が回避のための判定ロールを行うという形式であり、クトゥルフ神話TRPGの戦闘が平板にも関わらずテンポが悪いと言われる原因にもなっていた。
 他にも、戦闘時の特殊行動が戦闘マニューバーにまとめられたり、曖昧すぎた火器関係のルールが整備されたり、BRPとの整合性を失わないように配慮されながら、今まで指摘されてきた問題点の一応の解決を図ったよう感じられた。

3番目の物語性の強化は、過去の版との方向性の違いと言えるかもしれない。
 それが顕著に表れている例が、アイデアロールのルール変更で、過去の手掛かりを再発見する際に使用するものとなっているが、ルールブックからこの際の例を抜き出すと、
・アイデアロールに成功した場合:過去の手掛かりをもう一度調べ直し、書店に戻ると、書店の店主がカルトの集会にいた人物と話しているのを発見した
・アイデアロールに失敗した場合:四週間を費やし過去の手掛かりを調べたが何も発見できず、たまたま見覚えのある書店を見つけ、熱心に本を探すうちに、いつのまにか入ってきた客達が曲がった短剣を抜いて自分に接近し、店主が店のブラインドを閉めているのに気付く
 という風に、ほぼマスターシーンに近いレベルで状況が動き、プレイヤー達には重要な選択が迫られることになる。
 技能を失敗した時に振り直しを行うための「プッシュ」ロールも、「賭け金を上乗せする」という表現がされ、時間や労力、協力者など(有形無形の)新しいリソースを注ぎこむ行為を提案することが必要で、失敗した時の更なるリスクと相まって、シナリオ進行に緊張感をもたらす。
 探索者の背景の追加も物語性を強化する要素の一つで、探索者のロールプレイの方向性の決定の補助をするだけではなく、探索者がシナリオに関わる動機付けとして有効である。
 KPルールブックにも、背景情報をシナリオと照らし合わせ設定を擦り合わせることで、導入をスムーズに行う方法が例示されている。
 背景情報がいわゆる「導入ハンドアウト」に近い役割を果たし、PCがシナリオに関わる積極的な理由となるのは、シナリオを作る上でも効果を発揮するだろう。
 また、背景情報の裏にある真実が明らかになった時、探索者の正気と常識が大いに揺るがされるのは「インスマスを覆う影」でも効果的な演出となっていたが、同様に、狂気に達した時に背景情報が修正されるというルールは、既知世界の反転を表現する中々大胆なルールだと思う。
 一方で、一時的狂気に陥ったプレイヤーは、これまで仲間から精神分析を受けるしか回復手段がなかったが、背景情報が歪められる危険を冒して自力で回復する手段が用意された。
このルールは全員が狂気で行動不能=シナリオ進行崩壊の救済手段となるのと同時に、更なる危険が降りかかるリスクをプレイヤーに迫る面もあり、プレイヤーの選択をプレイの醍醐味とするスタイルがここからも読みとれる。
 プレイヤーの選択は探索者決定の際にも既に始まっており、能力値の高さだけではなく低さもまた個性であると強調したり、職業技能値の算出基準でEDUのみならず各職業の重要な能力が計算に入ったり、作成時に背景情報が与えられたり、プレイヤーが自分のキャラクターについて考え選択する幅が増えている。
 また、ダイスロールをできるだけプレイヤーに行ってもらうことが文章中でもデザイン中でも強調されている。
 具体例としては、NPCに働きかけるための技能が相手との対抗ロールから、相手の技能値を基準として難易度レベルを設定する形式になったことなどからも窺うことができる。
ただし、注意すべき点は、これらの要素は今までのクトゥルフ神話TRPGに存在しなかったものではないということである。
 シナリオの開始時に「PCの一人は亡くなった叔父の遺産を継承する権利を持ち~」などの設定をキーパーから与えることはままあった。
 このようなナラティブ的な要素をルールとして成文化しピックアップしたことが新版の特徴と言えるだろうか。
 まとめると、プレイヤー主体のシナリオ展開、迫られる葛藤とプレイヤー自身の選択がより重要視されるシステムとなったと言えるだろうか。

デザイン性の強化についてだが、
 キックスターターによる資金集めが好調だった結果、ルールブックはフルカラーとなった(おかげで1年間製作期間が延長された)わけだが、その甲斐あって収録されているイラストはとてもレベルが高く、クトゥルフ神話TRPGの雰囲気を大いに掻き立ててくれる。
 これらのイラストは『アーカム・ホラー』や『クトゥルフ神話カードゲーム』などでその画筆を奮ったイラストレーターの手によるものが少なからず見受けられる。
ケイオシアムはこれらの商品にライセンスを発行し、協力を行ってきたわけだが、その成果が表れていると言えるだろう。
 また、1920年代の解説などでは当時の写真などが資料として用いられており、古き良き時代の雰囲気を伝えてくれる。
 現実世界をゲームの舞台とするクトゥルフ神話TRPGならではの資料活用法だろう。
 全体的なデザインも、メモ風のレイアウトや羊皮紙を模したコラム欄など、雰囲気を重視したものが目立ちながらも、決して読みづらくない。
 ただ、和訳版が発売されることになれば、このフルカラーのデザインは印刷の料金を上昇させることになりそうで、かといってこれだけ贅沢にルールブックを彩るイラストを味わえないのは大きな損失ではあるし、痛し痒しとなるかもしれない。
 せめて、電子書籍版が書籍版と同時に発売されたり、収録イラストの画集を別に製作したり、なんらかの救済手段が欲しい所である。

 正直な感想として第7版の登場で第6版の歴史的意義は終わりを迎えたように思う。
 旧来のクトゥルフ神話TRPGと異なる方向性を求めるなら、"Trail of Cthulhu"を始めとするクトゥルフ神話を題材としたシステムは意外と多く存在しており、そちらに乗り換えればいい。
 旧来のクトゥルフ神話TRPGの方向性のゲームをプレイしたいのであれば、明らかに遊びやすくなっている7版に移行すればいい。
 かつて、D&Dは3.5版から4版に移行する際、ゲームの根本的思想・方向性が大きく変化し、それに対する賛否が議論され、結果として3.5版の影響を色濃く残すパスファインダーRPGが生まれた。
 クトゥルフ神話TRPG第7版では、そのようなことは起こらないと思う。ケイオシアムも既に第7版対応のサプリメント・シナリオを発表しており、移行を進めている。
 ライセンス契約を結ぶ他企業もそれに倣う可能性が高く、第7版の出来を客観的に評価するには、来年のケイオシアム以外の企業がどれほど7版対応サプリ・シナリオを発表するのか、というのに着目するのもいいかもしれない。
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